僕は、社会保障制度といえば、通常けがや病気になったときの治療や、障害を負って生活がなりたたなくなったとき、失業したときなどに、それまでの所得にかかわらずに生活を保障したり、治療費を軽減したりする制度だと思ってきた。
ところが僕は最近、社会保障制度が、次のような性格を帯びるようになってきていないかと思っている。
①社会保障が、無収入の人や低所得者を排除する。
②社会保障が、低所得者を収奪し、ときとして、社会保障が所得の再分配・・・ただし、低所得者から高所得者への再分配をおこなう。
社会保障制度といっても、いろんな制度があるので、一概に上記①②のようにいうのは総計かもしれないが、とりあえず今回、国民健康保険制度を例にあげて考えてみよう。
4人家族(夫38歳=自営業、妻38歳=無収入、中学生の子ども13歳=無収入、小学生の子ども10歳=無収入)を例にとる。仮に、福岡県北九州市民とする。北九州の算定式は、下記URL参照。
http://www.city.kitakyushu.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=14256
計算してみると、どうなるか。
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■A■ 所得(※収入から、事業にかかった必要経費を差し引いた所得)が200万の場合
所得200万円-基礎控除33万円=167万円。
したがって北九州市の算定方式により、「所得割」は167万(円)×0.104=17万3680(円)
これに
「世帯割」(1世帯に必ずかかる)31090円と、「均等割」(世帯の構成員全員にそれぞれかかる)24110円を4人分加えて、127530円になるので、これを所得割と合計。すると、30万1210円になる。これが国民健康保険料。
所得200万円にしめる割合は、15.06%である。
■B■所得300万円の場合
所得割は、同様の計算で277680円。
世帯割と均等割(合計127530円)を加えて、40万5210円。
所得に占める割合は、13.51%。
■C■所得400万円の場合
上記と同様に計算して、保険料は50万9210円。
国保料は50万9210円。
所得に占める割合は、12.73%。
■D■所得500万円の場合
上記と同様に計算すると、61万3210円。
しかし、国保料には上限が53万円と決められているので、53万円。
上限のおかげで83210円を支払わないですむ。
保険料は所得の10.60%ですむ。
■E■所得700万円の場合
保険料は上記と同様に計算して、82万1210円なるはずだが、上限のおかげで53万円。291210円を払わずにすむ。
保険料は所得の7.57%になる。
■F■所得1000万円の場合
保険料は上記と同様に計算して1133210円になるはずだが、上限のおかげで53万円。
60万3210円を払わずにすむ。
保険料は所得の5.30%になる。
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どうだろうか? 上記は概算だが、所得が高いほど、所得に占める国保料の割合が下がっていくのだ。これが本当に社会保障制度とよべるのか、と疑問に思うのは、僕だけではないだろう。もう少し所得の額に応じて徴収する割合が高まっていく、累進制にすべきだろう。
国保料は今日、滞納率が2割程度の自治体はザラである。2006年には、国保料の滞納世帯は480万世帯にも及んでいる。平成17年の国勢調査では、大阪府の総世帯数が365万世帯だというから、大阪府の総世帯数よりも滞納が多い、ということであるから、ゆゆしき事態である。
だが、こんなに低所得者に重く、高所得者に軽い制度では、滞納もなかなか改善しないだろう。
ところで、上記の①②について、なぜそう思うのか、国保料問題にそって説明しませう。
①は、単純に、所得が低いと国保料が払えなくなるってことである。払えなくなると、国保の場合、短期保険証、やがて資格証明書を出される。
資格証明書というのは「国保に入ってますよ、でもいまは国民健康保険料は滞納しているので、全額窓口で医療費をはらわなければなりません。しかし、保険料をおさめたあかつきには残りの7割の医療費を患者に払い戻しますよ」という、ずいぶん奇特な制度である。
実際には、所得が低い人ほど、資格証明書を発行されても、保険料をなかなかおさめられない。しかも、病気が、あるいはけがが重ければ、たとえそれまで保険料をおさめていても、働けなくなるのである。働けなくなれば、当然収入が途絶える。そんな人間が保険料を払うのは困難だ。そこへきて「後からお金が戻るから、いまは医療費を全額(10割)自分で払ってください」なんて、払えないことが多いのは当たり前だ。糖尿病でインシュリンを注射しているような人は、一月の医療費が3割負担で1万円をこえるのはザラだ。10割負担で月3万円超にもなる。
もうこうなってくると、お金が払えない→保険料が資格証明書になる→医療費は全額自己負担→お金がないから病院にいけません→病気もよくならず、働けません→収入が入りません→ますます病院にいけません→病気が悪くなります→耐えきれず病院に担ぎ込まれたときには手遅れですというような、地獄への坂道をたどるしかない・・・というケースも発生してくるだろう。
ましてや、いまや生活保護はしめつけがひどく、働けないのに働けるだろうとかいって、受給させないことも多くなっている。これが、上記①のように解釈する理由である。
②は、なぜそう思うか。理由は、それまで保険料をおさめていても、いざ病気で働けなくなって保険料を払えなくなると、資格証明書が発行されて、それまでまじめに保険料をはらっていても、その保険料は資格証明書を発行された人にではなく、保険料を払う余裕のある人のために使われるからである。
昨年12月3日のNHKスペシャル「もう医者にかかれない」では、厚労省の国保担当の課長補佐が「(国保制度は)負担した人にだけ給付がある」「一銭も払えない人は対象にしていない」などと豪語したが、これが厚労省の考える医療保険制度のあるべき姿である。金が払えてこそ、命は保障される。これが日本のあるべき姿なのか? 僕は厳しく問われなければならないと思う。
そもそも、高所得者ほど保険料の負担割合も軽いんだよな・・・。こんなの、どこが社会保障制度なのさ? 抜本的改善が必要だ。
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